『古事記』にみる敗者の形象(ブックレット近代文化研究叢書16)
『古事記』にみる敗者の形象(ブックレット近代文化研究叢書16)
烏谷 知子 (著者)
日本人の敗者に対する考えについて『古事記』を題材に書くことを思い立ったが、近代文学から最も遠いところにある『古事記』を研究テーマとする筆者の浅薄な知識では、「敗者の形象」というテーマは容易に説けるものではなく、結果は『古事記』にたいする敗者となってしまった憾みがある。けれども、長きに亘って『古事記』を研究テーマとして考えてきたことをまとめる機会を与えられたことは有り難く、幸せなことであった。本書の読者が『古事記』にいくらかなりとも関心を抱かれ、原初に思いを馳せてくださるならば望外の喜びである。(本書より)
初版2005年7月1日
B5判/157頁
目次
凡例
はじめに
序章 戦闘の果てに—都夫良意富美
第一章 さすらいの果てに—須佐之男命
第一節 天照大御神と須佐之男命
第二節 誓約・勝ちさび
第三節 追放・大気都比売殺害・八俣大蛇退治
第四節 根之堅州国・大国主神・天照大御神
第五節 近代文学におけるスサノヲノミコト
第二章 大国主神—二度死んで生き返る神
第一節 五つの神名を併せもつ神
第二節 稲羽の素菟・八十神の迫害
第三節 根之堅州国訪問
第四節 八千矛神の求婚
第五節 大国主神と少名毘古那神の国作り・海を光らして依り来る神の祭祀
第六節 国譲り
第七節 大国主神その後
第三章 沙本毘売伝承—ヒメの闘い 愛と二つの制度の狭間で—
第一節 姫彦制
第二節 垂仁天皇と沙本毘古・沙本毘売
第三節 『日本書紀』の記述との相違
第四節 本牟智和気御子
第五節 沙本毘売と本牟智和気御子 話形の展開
第四章 倭建命—その光と影
第一節 倭建命の系譜の問題
第二節 小碓命
第三節 西征
第四節 出雲建征討
第五節 東征
第六節 走水
第七節 足柄の坂・酒折宮
第八節 倭建命と美夜受比売の唱和歌謡
第九節 伊服岐山
第十節 さすらい・望郷
第十一節 大御葬歌
第十二節 青木繁が描いた神話・「日本武尊」
第十三節 近代文学におけるヤマトタケル
第五章 「雀とらさね」—女鳥王
第一節 仁徳天皇と大后石之日売命
第二節 大雀命(大鷦?尊)
第三節 女鳥王と速総別王
第四節 石之日売大后
第五節 『日本書紀』の隼別王と雌鳥皇女の反乱伝承
第六節 異端の皇女
第六章 愛に殉じる—軽太子と軽大郎女歌謡物語
第一節 歌謡物語
第二節 兄妹婚
第三節 『日本書紀』の構成
第四節 死の道行
終章 「敗者」—その表現世界に通底するもの
おわりに
初出参考一覧
発行所: 近代文化研究所